浮上する日本国債版テーパリング懸念、日銀の情報発信に期待
日銀による月間7兆円強の国債買入額が年明け以降、6.5兆円程度に減額されるとの懸念が浮上している。今年4月から始まった異次元緩和で買い入れる規模と同量を2014年の12カ月間に買い入れるとすると、1カ月当たりの買い入れ額が減少することになるためだ。
また、買入国債の年限が長期化している影響で、来年度に償還を迎える国債が減少していることも影響しそうだ。米国は緩和縮小(テーパリング)開始を決めたが、日本でも国債買入減が緩和縮小と受け止められる可能性があり、日銀による積極的な情報発信を期待する声が出ている。
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年明け以降の国債買入減を見据えた日銀の布石ではないか──。FOMCを控えた持ち高調整で円高・株安が進んだ16日、日銀が国債買入を見送ったことについて、ある外資系証券の債券関係者はこう指摘した。
12月は営業日数が少ないため、国債入札日や日銀金融政策決定会合を除くと、国債買入がほぼ連日通告されても不思議ではないが、日銀は市場予想に反して国債買入を見送った。12月に入り「日銀買入をめぐって日銀と市場の呼吸が合わない」(国内証券の債券担当者)と、市場参加者からはため息が漏れる。
日銀は12月に入り、突如として国庫短期証券買入の減額や残存1年超5年以下を対象にした国債買入の減額に踏み切っている。日銀が13年末に設定しているマネタリーベースの目標達成にメドがついたため、資産買入ペースを調整しているとの見方が大勢だが、前振れがない金融調節の変化に「金利ボラティリティの高まりを招きかねない」(外資系証券)と不満の声が渦巻く。
日銀が2014年に予定している国債買い入れ額は、グロスベースで50兆円。大和証券によると、日銀保有銘柄の14年の償還分は10月末現在で25兆円程度。残存1年以下の国債を現行の月額2200億円ペースで買い入れた場合、償還額は28兆円程度になる。
日銀は毎年50兆円程度の国債残高が増えるような政策をしているため、14年度の買入総額は78兆円程度で、月間6.5兆円程度になる計算だ。一方、国債買入を現行の月間7兆円ペースを維持するとすれば総額84兆円と買い過ぎになる。
日銀は現行の国債買入を、「残存1年以下」、「同1年超5年以下」、「同5年超10年以下」、「同10年超」、「変動利付債・物価連動債」のカテゴリーに分けて実施している。
大和証券・シニアJGBストラテジストの小野木啓子氏は「来年度の国債発行計画では中短期債の減額、超長期(30年)債の増額が見込まれている。国債買入を月間6.5兆円に減額するオペレーションの中で、国債発行計画を踏まえて、カテゴリー別の日銀買入額をどうするのか、市場の関心が高まっている」と指摘する。
18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和縮小が決定された。「利下げや資産買入などで金融緩和を過大に織り込んできたグローバルマーケットは、時間をかけながら徐々にその巻き戻しが入るのではないか」(三井住友アセットマネジメント・シニアファンドマネージャー、深代潤氏)との見方が出ている。
市場が警戒するのは、月間の国債買入減が海外勢を中心に日銀の緩和後退と受け止められる可能性があることだ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニアマーケットエコノミスト、六車治美氏は「日銀のコミットメントが保有残高の増加ペースに置かれているとしても、月間の買入金額の減額は、『緩和の後退』と解釈される可能性が大きい」と指摘する。
米連邦準備理事会(FRB)は資産買入を100億ドル減額することを決めたばかりだが、その縮小がテーパリングと理解されているだけに、日銀がテーパリングでないと丁寧に説明したところで、市場が素直に聞き分けてくれるとは考えにくいとみている。市場に波風を立てず、日銀からの情報発信を待ちたいと大和証券の小野木氏は話す。
19日の円債市場は、20日の国債大量償還に伴う再投資ニーズなど固有の好需給要因に支えられ、円安・株高にもかかわらず、全般に底堅さを維持。
市場では、生保・年金勢の買いとの観測もあるが「買入減額は、緩和後退と受け止められかねないため、選択肢として取りにくい。遅かれ早かれ、買入年限のアロケーション調整で、超長期ゾーンの買入増が打ち出される可能性も否定できない」(国内金融機関)との見方も出ている。
(星裕康 編集:伊賀大記)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE9BI05Q20131219?sp=true
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